このシリーズでは第3章の様々な範囲で出題されるビタミン成分のマスターを目指します。
ビタミン成分は種類が多く、さらに1つのビタミンに複数の作用があるため、苦労する部分です。
多くのテキストでは、ビタミン成分が複数の範囲に分かれて記載されているため、まとめて勉強する機会があまりありません。
時間が限られている中で、自分でまとめをつくる時間はもったいないので、こちらの記事をご覧ください。
今回はまとめ②です。各ビタミンの作用を解説していきます。ビタミンの作用について覚えるのが大変ですが、避けては通れないため、過去問を解きながら頭に入れましょう。
各ビタミンの作用
ビタミンA
ビタミンAは主に眼科用薬や滋養強壮保健薬で出題されます。稀に痔の薬で出題されることもあります。
主な作用:
●傷の治りを促す作用を期待。
●視細胞が光を感受する反応に関与していることから、視力調整等の反応を改善する効果を期待して用いられる。
●夜間視力を維持したり、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素である。
ビタミンA主薬製剤:
レチノール酢酸エステル、レチノールパルミチン酸エステル、ビタミンA油、肝油等が主薬として配合された製剤で、目の乾燥感、夜盲症(とり目 、暗所での見えにくさ )の症状の緩和、また、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時、発育期等のビタミンAの補給に用いられる。
ビタミンAは脂溶性ビタミンであり、欠乏症(夜盲症)以外に過剰症もあります。そのため、上限が定められています。
一般用医薬品におけるビタミンAの1日分量は4000国際単位が上限。
妊娠3ヶ月前から妊娠3ヶ月までの間にビタミンAを1日10000国際単位以上摂取した妊婦から生まれた新生児において先天異常の割合が上昇したとの報告があります。
そのため、妊娠3ヶ月以内の妊婦、妊娠していると思われる女性及び妊娠を希望する女性では、医薬品以外からのビタミンAの摂取を含め、過剰摂取に留意する必要があります。
※人参などの野菜類に含まれるβカロテンは、体内に入ると、必要な分だけがビタミンAに転換されるため、ビタミンAの過剰摂取につながる心配はないとされています。
ビタミンD
ビタミンDは主に滋養強壮保健薬の範囲で出題されます。
主な作用:
腸管でのカルシウム吸収及び尿細管でのカルシウム再吸収を促して、骨の形成を助ける栄養素である。
ビタミンD主薬製剤:
エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロールが主薬として配合された製剤で、骨歯の発育不良、くる病の予防、また、妊娠・授乳期、発育期、老年期のビタミンDの補給に用いられる。
くる病:ビタミンDの代謝障害によって、カルシウムやリンの吸収が進まなくなるために起こる乳幼児の骨格異常。
ビタミンDも脂溶性ビタミンで、過剰症があります。
ビタミンDの過剰症としては、高カルシウム血症、異常石灰化が知られています。
高カルシウム血症は、血液中のカルシウム濃度が非常に高くなった状態で、自覚症状がないこともあります。初期症状としては、便秘、吐きけ、嘔吐、腹痛、食欲減退、多尿等が現れます。
ビタミンE
ビタミンEは主に以下の範囲で出題されます。
・高コレステロール改善薬
・痔の薬
・眼科用薬
・歯や口中に作用する薬
ビタミンEは「抗酸化」と「血行促進」がポイントです。このポイントを覚えておくと対応できる問題が多いです。
主な作用:
●コレステロールからの過酸化脂質の生成を抑えるほか、末梢血管における血行を促進する作用があるとされ、血中コレステロール異常に伴う末梢血行障害(手足の冷え、痺れ)の緩和等を目的として用いられる。
●肛門周囲の末梢血管の血行を改善する作用を期待。
●末梢の微小循環を促進させることにより、結膜充血、疲れ目等の症状を改善する効果を期待。
●歯周組織の血行を促す効果を期待。
ビタミンE主薬製剤:
トコフェロール、トコフェロールコハク酸エステル、トコフェロール酢酸エステル等が主薬として配合された製剤で、末梢血管障害による肩・首すじのこり、手足のしびれ・冷え、しもやけの症状の緩和、更年期における肩・首すじのこり、冷え、手足のしびれ、のぼせ・ほてり、月経不順、また、老年期におけるビタミンEの補給に用いられる。
ビタミンEにも副作用があるので、把握しておきましょう。
ビタミンEは下垂体や副腎系に作用してホルモン分泌の調節に関与するとされています。
→ときに生理が早く来たり、経血量が多くなったりすることがあります。
この現象は内分泌のバランス調整による一時的なものですが、出血が長く続く場合には他の原因による不正出血も考えられるため、医療機関を受診して専門医の診療を受けるなどの対応が必要です。
ビタミンB1
ビタミンB1は主に滋養強壮保健薬の範囲で出題されます。それ以外にもかぜ薬等でも出題されることがあります。
主な作用:
●炭水化物からのエネルギー産生に不可欠な栄養素で、神経の正常な働きを維持する作用がある。
●腸管運動を促進する働きもある。
ビタミンB1主薬製剤:
チアミン塩化物塩酸塩、チアミン硝化物、ビスチアミン硝酸塩、チアミンジスルフィド、フルスルチアミン塩酸塩、ビスイブチアミン等が主薬として配合された製剤で、神経痛、筋肉痛・関節痛(
肩・腰・肘・膝痛、肩こり、五十肩など)、手足のしびれ、便秘、眼精疲労 (慢性的な目の疲れ及びそれに伴う目のかすみ・目の奥の痛み)の症状の緩和 、脚気、また、肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB1の補給に用いられる。
ビタミンB2
ビタミンB2は主に以下の範囲で出題されます。
・乗物酔い防止薬
・高コレステロール改善薬
・眼科用薬
・滋養強壮保健薬
主な作用:
●吐きけの防止に働くことを期待。
●コレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進作用、中性脂肪抑制作用、過酸化脂質分解作用。●リボフラビンの活性体であるフラビンアデニンジヌクレオチドは、角膜の酸素消費能を増加させ組織呼吸を亢進し、ビタミンB2欠乏が関与する角膜炎に対して改善効果を期待。
●脂質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素。
ビタミンB2主薬製剤:
リボフラビン酪酸エステル、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、リボフラビンリン酸エステルナトリウム等が主薬として配合された製剤で、口角炎(唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎 (唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび ・吹き出物 、肌あれ、赤ら顔に伴う顔のほてり、目の充血、目の痒みの症状の緩和、また、肉体疲労時、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB2の補給に用いられる。
ビタミンB2の摂取により、尿が黄色くなることがあります。これは使用の中止を要する副作用等の異常ではありません。
ビタミンB6
ビタミンB6は主に以下の範囲で出題されます。
・乗物酔い防止薬
・貧血用薬
・眼科用薬
・滋養強壮保健薬
主な作用:
●吐きけの防止に働くことを期待。
●貧血を改善するため、ヘモグロビン産生に必要。
●アミノ酸の代謝や神経伝達物質の合成に関与していることから、目の疲れ等の症状を改善する効果を期待。
●タンパク質の代謝に関与し、皮膚や粘膜の健康維持、神経機能の維持に重要な栄養素。
ビタミンB6主薬製剤:
ピリドキシン塩酸塩又はピリドキサールリン酸エステルが主薬として配合された製剤で、口角炎 (唇の両端の腫れ・ひび割れ)、口唇炎(唇の腫れ・ひび割れ)、口内炎、舌の炎症、湿疹、皮膚炎、かぶれ、ただれ、にきび・吹き出物、肌あれ、手足のしびれの症状の緩和、また、妊娠・授乳期、病中病後の体力低下時におけるビタミンB6の補給に用いられる。
ビタミンB12
ビタミンB12は主に眼科用薬と滋養強壮保健薬の範囲で出題されます。また、貧血用薬でも出題されることがあります。
主な作用:
●正常な赤血球の形成に働く。
●目の調節機能を助ける作用を期待。
●神経機能を正常に保つために重要な栄養素。
ビタミンB12は、シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩等として、ビタミン主薬製剤、貧血用薬等に配合されている。
ビタミンC
ビタミンCは主に貧血用薬、歯や口中に用いる薬や滋養強壮保健薬の範囲で出題されます。またかぜ薬等でも出題されることがあります。
主な作用:
●消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つ。
●コラーゲン代謝を改善して炎症を起こした歯周組織の修復を助け、また、毛細血管を強化して炎症による腫れや出血を抑える効果を期待。
●体内の脂質を酸化から守る作用(抗酸化作用)を示し、皮膚や粘膜の機能を正常に保つために重要な栄養素。
●メラニンの産生を抑える働きもある。
ビタミンC主薬製剤:
アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム又はアスコルビン酸カルシウムが主薬として配合された製剤で、しみ、そばかす、日焼け・かぶれによる色素沈着の症状の緩和、歯ぐきからの出血・鼻血の予防、また、肉体疲労時、病中病後の体力低下時、老年期におけるビタミンCの補給に用いられる。
その他のビタミン
その他のビタミンとして以下が出題されます。
・ナイアシン
・パントテン酸カルシウム、パンテノール
・ビオチン
・葉酸
皮膚や粘膜などの機能を維持することを助ける栄養素として、ナイアシン(ニコチン酸アミド、ニコチン酸)、パントテン酸カルシウム、ビオチン等が配合されている場合がある。
ニコチン酸アミドは乗物酔い防止薬の範囲で、「吐きけの防止に働くことを期待して配合される」と出題されることがあります。
パンテノール、パントテン酸カルシウム等は自律神経系の伝達物質の産生に重要な成分であり、目の調節機能の回復を促す効果を期待して用いられます。
葉酸は正常な赤血球の形成に働きます。
以上が、ビタミンのまとめ②です。ビタミン成分は実務でも重要な成分なので、過去問を解きながら、反復学習をして、マスターしましょう!
試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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