この記事では、過去に出題されたひっかけ問題を5問説明していきます。ひっかけ問題に対応できるかどうかで合否を分けることがありますので、ぜひご活用していただけたら嬉しいです。
①プロスタグランジンは、脳の下部にある体温を調節する部位(温熱中枢)に作用して、体温を通常よりも下げる方向に調節する。
答えは誤です。
正しくは、
体温を通常よりも高く維持するように調節する
となります。
解熱鎮痛薬の成分と組み合わせて出されると、ややこしい問題です。
問題文で、プロスタグランジンの働きを聞いているのか、解熱鎮痛薬のメカニズムを聞いているのかをしっかり確認して問題を解いてください!
問題文の意図を読み間違えると痛い目に合います。
細菌等に感染をすると、熱が出て細菌を倒そうとするのは皆さんご存じかと思います。
熱が出るということは体温が上がるわけですが、体温を上げる際にプロスタグランジンが関係します。
解答にあるように、プロスタグランジンは体温を通常よりも高く維持するように調節します。
ここだけ読むと、ある意味、当たり前なことが書かれているわけですが、解熱鎮痛薬が出てくるとひっかけ問題になります。
解熱鎮痛薬というのは、体内でプロスタグランジンが作られるのを防ぎます。
プロスタグランジンが作られないから、「体温を高く維持するように調節できなくなる」
→熱を下げる。
ということです。
②タンニン酸ベルベリンは、牛乳にアレルギーがある人では使用を避ける必要がある。
答えは誤です。
正しくは、
タンニン酸ベルベリンではなく、タンニン酸アルブミンの記述です。
ベルベリンは生薬のオウバク、オウレンに含まれる成分です。
抗菌作用のほか、抗炎症作用も併せ持つとされます。
オウバクのエキス製剤は、苦味による健胃作用よりも、ベルベリンによる止瀉作用を期待して、消化不良による下痢、食あたり、吐き下し、水あたり、下り腹、軟便等の症状に用いられます。
一方、アルブミンは第2章の血液の範囲に出てきます。
アルブミンは血しょうの成分です。主な役割は、以下の通りです。
●血液の浸透圧を保持(とても簡単に言うと、体がむくむのを防いでいる)
●ホルモンや医薬品の成分等と複合体を形成して、それらが血液によって運ばれるときに代謝や排泄を受けにくくする。
ベルベリンとアルブミンは文字数も同じで似たような言葉ですが、全く別物ですので、ひっかからないように注意が必要です。(このひっかけ方は悪意を感じますが(笑))
③ジャコウは、シカ科のCervus nippon Temminck、Cervus elaphus Linné、Cervus canadensis Erxleben 又はその他同属動物の雄鹿の角化していない幼角を基原とする生薬で、強心作用の他、強壮、血行促進等の作用があるとされる。
答えは誤です。
正しくは、
ジャコウは、シカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とする生薬で、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる等の作用があるとされる
となります。
問題文は、ロクジョウの記述です。
ジャコウとロクジョウはどちらも鹿に関係するので、ひっかけ問題として出やすいです。
生薬として使う部位が異なるので、そこでも見分けられます。
④脂質異常症とは、医療機関で測定する検査値として、低密度リポタンパク質(LDL)が40mg/dL以上、高密度リポタンパク質(HDL)が140mg/dL未満、中性脂肪が180mg/dL以上のいずれかがあてはまる状態をいう。
答えは誤です。
正しくは、
低密度リポタンパク質(LDL)が「140mg/dL以上」、
高密度リポタンパク質(HDL)が「40mg/dL未満」、
中性脂肪が「150mg/dL以上」のいずれかがあてはまる状態
となります。
いくつか条件が出てくる場合は、
・すべての条件を満たす場合に当てはまるのか
・一部でも満たせば当てはまるのか
を覚えておく必要があります。
⑤ナファゾリン塩酸塩は、過度に使用すると鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が収縮して二次充血を招き、鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすい。
答えは誤です
正しくは、
ナファゾリン塩酸塩は、過度に使用されると鼻粘膜の血管が反応しなくなり、逆に血管が拡張して二次充血を招き、鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすい
となります。
血管が拡張するせいで、鼻が塞がれてしまい、鼻詰まりが起きてしまいます。
鼻詰まりが起きるメカニズムも併せて覚えておくと、対処できます。
以上がひっかけ問題集めてみた【第3章】①です。第3章の他のひっかけ問題や他の章の問題も載せていきますので、勉強の参考にしてもらえたら嬉しいです。
試験問題作成に関する手引き(令和5年4月)(厚生労働省)
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